名称変更の背景と理由
従来の「PCOS(polycystic ovary syndrome/多嚢胞性卵巣症候群)」という名称は、卵巣に多数の嚢胞があることを強調していましたが、実際にはすべての患者に嚢胞が見られるわけではなく、病態の本質を正確に表していませんでした。これにより、患者が「卵巣の病気」と誤解しやすく、診断や理解の遅れにつながることが指摘されてきました。
新しい名称「PMOS(polyendocrine metabolic ovarian syndrome/多内分泌代謝性卵巣症候群)」は、卵巣だけでなく、内分泌異常、代謝異常、生殖機能、皮膚症状、心理的問題など多面的な症状を含む全身性の症候群であることを反映しています 。
診断・治療への影響
名称変更は病態や診断基準、治療法には直接影響しません。従来通り、診断基準は以下の3つのうち2つを満たすことで行われます:
- 超音波検査での多嚢胞性卵巣の確認
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)の上昇
- 臨床的または生化学的な高アンドロゲン症状
治療も従来通りで、排卵誘発療法やホルモン療法、代謝改善を目的とした生活習慣介入などが行われます。名称変更は、婦人科だけでなく内分泌科や代謝疾患、皮膚科、精神心理面を含めた包括的診療への意識向上を目的としています
国際的合意と移行期間
この名称変更は、国際的な研究者、医療者、患者団体の協働による合意形成プロセスを経て決定されました。モナッシュ大学の報告によると、14年以上にわたる国際的取り組み、56の患者団体・専門家団体の参加、22,000件を超えるアンケート調査、国際ワークショップを経て、2028年の国際ガイドライン改訂までに新名称が完全導入される予定です。日本国内では現時点で正式な名称変更は発表されておらず、診療現場ではPCOSの名称が引き続き使用されていますが、国際的な動向としてPMOSへの移行が進められています 。
患者へのメッセージ
- 名称が変わるだけで、診断や治療内容は変わりません。
- 症状や体型に関係なく、気になる場合は早めの受診が推奨されます。
- PMOSという名称は、全身性の内分泌・代謝疾患として理解するためのものであり、患者や医療者の認識向上が期待されています。
まとめ
今回の名称変更は、単なる言葉の置き換えではない。PCOSという名称が「卵巣嚢胞」に過度に注目させていたのに対し、PMOSはこの疾患の本質である 内分泌・代謝・生殖・心理・皮膚症状を含む多臓器性疾患 という理解を促すものである。患者説明では今後、「卵巣に嚢胞がある病気」ではなく、「ホルモンと代謝のバランスが関係する全身性の症候群」と説明する方が、より実態に即しています。
